東京高等裁判所 昭和39年(ラ)175号 決定
相手方は、係争の不動産について、抗告人の登記簿上の住所は、「千葉県船橋市前原町一丁目四二七番地」であるとして、訴訟を維持してきたことが明らかである。また、相手方が書証として提出した各登記簿謄本(右訴訟記録第一二丁から第五九丁まで)によると、係争不動産の登記簿上にも抗告人の住所として右と同じ所番地が記載されていることが認められる。これらによると、第一審裁判所が、判決書中抗告人の登記簿上の住所として右のとおりに表示したことについては、一見明白な誤謬はないようにもみえる。けれども、更正決定申立書に添付された登記簿謄本(右訴訟記録第七四六丁)および当審において相手方から提出された登記簿謄本(記録五丁から三一丁まで)によると、抗告人は、右訴訟が提起されて間もない昭和三一年七月二六日に、同月二四日その住所を「東京都港区麻布網代町一番地」に変更した旨付記登記を経由したことが、またさきに掲げた各登記簿謄本によると、これら謄本はいずれも右付記登記の日に先立つ同年六月二七日付で作成されたものであることがそれぞれ認められる。これらのいきさつからみると、判決裁判所も相手方も右変更登記がなされたことを知らなかつたために判決中抗告人の登記簿上の住所の表示が前記のとおりになつたものと推察される。もし、同裁判所が、判決書作成当時この事実を知つていたならば、当然、判決中抗告人の登記簿上の住所として新住所を表示したであろうし、訴訟当事者もこれに異論がなかつたものと思われる。このような場合には、判決に民事訴訟法第一九四条の「明白なる誤謬」があるとして判決の更正を許すことが、当事者の真意にそい、かつ、訴訟経済にもかなうゆえんであると考える。
(新村 市川 吉田)